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ルシアン×フェアで10の強さ
04.笑顔を見せて







珍しく一人も現れなかった幼馴染を、不審に思って訪ねたのは夕暮れ時だ。店番を頼まれてくれたコーラルに、すぐ戻るから、とは言ったのだが。
庭先に姉の姿は見えず、ため池まで歩いてみれば、果たして弟が剣を振っていた。足音よりも先、気配で訪問を認めはしたようだが、邪魔をしては悪いだろうというこちらの配慮に応じて、淡々と素振りを続ける。気勢もなく、噛み締めた唇以外は概ね無表情の彼を、少し離れて見守った。
やがて剣は鞘に収まり、振り向く琥珀の双眸に笑って見せる。
ひくり、少年の口端が、引きつるような動きをした。
 
「……どうかした?」
 
笑顔を浮かべ損ねた表情は、問いにみるみる曇ってしまう。
泳いだ視線を捕らえるため距離をつめれば、漸くぎこちない苦笑が向けられた。
 
「ちょっと、喧嘩しちゃって」
「……リシェルと?」
 
頷いて、僕が悪いんだけど、と金茶色の髪を掻く。
 
「リシェルが無理無茶無謀なこと言ったんじゃなくて?」
 
幼い頃からそれはそれは仲のいい姉弟だが、偶さかの言い争いはある。
乾いた笑い声を返答に代えて、ルシアンは視線を外した。
 
「今日は、僕が悪いんだ」
 
言葉を濁す。
それ以上の説明を拒んでいると、察することはできたし、幼馴染でも踏み込むことのできない領域があると、承知してはいるのだが。
突然、目の前に現れた壁に、戸惑いを覚えたのは事実だ。
 
「……何故かこんなところに」
 
背後に手を回し、腰のベルトから提げた獲物を抜き放つ。
 
「刀がありました。手合わせしようか、ルシアン」
 
一応、暗くなり始めてはいたので、護身用に持ってきたのだ。刀を佩いた少女に手を出す愚か者はさすがに現れず、荷物になるだけかと思ったが、用途が見つかりまずは安心。
咄嗟に間合いを取った少年は、琥珀色の双眸で瞬きを繰り返す。
 
「え」
「ほらほら、構え!」
 
心なし蒼くなりながら、彼も再び鯉口を切る。
 
「私が勝ったら、お姉ちゃんに謝りなさい」
「……」
「ルシアンが勝ったら、何でも好きなもの作ってあげるわ。一人じゃ食べきれないくらい」
「……頑張らなくちゃね」
「そういうこと!」
 
刃を構えて笑うというのも、妙な話ではあるのだが。
 
 
 
 


一個前のお題なんですが、腕相撲の話題であることをどこにも書いていませんでした。
それじゃ何が何だかわかんねぇだろ!
すいませんっした~。

ブロンクス姉弟が喧嘩する理由が思いつかなかったので、お茶を濁してみました。
ルシアンが弱音でも吐いたんじゃないですかね(テキトー)
ライリシェはしょっちゅう喧嘩しそうなイメージありますが(小さい頃は手も出てそう)、フェアリシェの喧嘩ってどんなだ。
なんで、リシェルシに喧嘩してもらいました。
カップリングみたいな表記になってますが、この場合はコンビってことで。
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