noizeが管理する幻水Ⅲ・Ⅴ、サモナイシリーズ中心のよろずブログサイトです。
はじめましての方は、カテゴリからaboutに飛んでください。
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
初っ端これですいません。
「お父さん」
真顔(この子供がそれ以外の表情を見せることは少ない)で、皿を運びながら、コーラルがつぶやいた。
今朝も現れるだろう幼馴染たちのために、食卓には四人分の食器が並べられる。
焼きたてのパンをバスケットに放り込みながら、立ち上がらずに応えた。
「リシェルお姉さんが」
まさかもう来たのかと、カウンターから顔だけ出す。
その姿は確認できず、首を傾げた。
「リシェルがどうした?」
透明な水差しには、朝日のきらめく清水が揺れる。
グラスに水を注ぎつつ、コーラルは頷いた。
「リシェルお姉さんが、一番気持ちいい・・・かと」
「・・・・・・・・・・」
愛するわが子(語弊)の言葉が理解できず、一杯にパンの詰まったバスケットを抱えてカウンターから出る。
テーブルの中央に置き、彼女の指定席にスプーンを一本、余計に置いた。
ティースプーンより幾分大きな、デザート用のものだ。
ご要望の、蜂蜜入りのパンナコッタを、彼女が気に入るようならメニューに追加しようという腹積もり。
「・・・・・何が?」
「抱かれ心地」
たっぷり一分、硬直した。
「・・・・・・お父さんはお前をそんな子に育てた覚えはありません」
「?」
膝から崩れ落ちそうになるのを何とか堪え、低い位置の薄い肩に手を置く。
「昨日、ミントお姉さんのお手伝いをしたら、抱きしめて頭を撫でてくれたんだけど」
あぁ、言われてみれば、そんなこともあった。
「ミントお姉さんは、少し苦しい。多分、胸が大きいから・・・かと」
冷静に分析しないでいただきたい。
今度こそ膝から崩れ、ライはテーブルに片手をついた。
育て方を間違えたのだろうか、育児の難しさは充分に承知していたつもりだが、とんだ落とし穴に眩暈がする。
とにかく改めてコーラルの肩に両手を置き、同じ高さの視線を強めた。
「いいか、コーラル」
「はい」
重々しく言えば、コーラルも神妙な様子で頷く。
「それを他の人に言うなよ。特に、本人たちには」
分かりました、は、元気な挨拶にかき消された。
姉弟が笑顔で手を振り、それに応えて立ち上がる。
「おはよ!」
「おはよう、ライさん、コーラルくん」
丁寧に頭を下げた後、コーラルの視線が水平の高さで留まる。
それからおもむろに、目前のリシェルに抱きついた。
どうやら確認の積もりらしいが。
目を丸くした彼女は、それでも金糸を愛しげに撫でる。
「何なに?甘えん坊さん?」
性格とは裏腹に慎ましやかな胸は、確かにコーラルの視界を圧迫する様子はなさそうだが。
朝っぱらからどこを見ているんだ、と、ライは軽い自己嫌悪を覚えた。
「どうしたの、ライさん?」
「何でもない」
トボトボとカウンターに歩いていく店主に、年下の幼馴染は首を傾げる。
「よぉし、コーラル。今日は私と図書館に行こうか!」
「図書館!」
ピコンと、コーラルの角が跳ねたように見えた。
フライパンに乗ったままのムニエルを皿に乗せながら、ため息を吐く。
「行く?」
「行く」
無表情に心なし嬉しそうな色を秘め、それから、ぎゅぅ、と。
こらこら、胸に顔を埋めるな!
最近、甘えるのが上手くなったようなコーラルに、ライは思わず口の中で説教をした。
真顔(この子供がそれ以外の表情を見せることは少ない)で、皿を運びながら、コーラルがつぶやいた。
今朝も現れるだろう幼馴染たちのために、食卓には四人分の食器が並べられる。
焼きたてのパンをバスケットに放り込みながら、立ち上がらずに応えた。
「リシェルお姉さんが」
まさかもう来たのかと、カウンターから顔だけ出す。
その姿は確認できず、首を傾げた。
「リシェルがどうした?」
透明な水差しには、朝日のきらめく清水が揺れる。
グラスに水を注ぎつつ、コーラルは頷いた。
「リシェルお姉さんが、一番気持ちいい・・・かと」
「・・・・・・・・・・」
愛するわが子(語弊)の言葉が理解できず、一杯にパンの詰まったバスケットを抱えてカウンターから出る。
テーブルの中央に置き、彼女の指定席にスプーンを一本、余計に置いた。
ティースプーンより幾分大きな、デザート用のものだ。
ご要望の、蜂蜜入りのパンナコッタを、彼女が気に入るようならメニューに追加しようという腹積もり。
「・・・・・何が?」
「抱かれ心地」
たっぷり一分、硬直した。
「・・・・・・お父さんはお前をそんな子に育てた覚えはありません」
「?」
膝から崩れ落ちそうになるのを何とか堪え、低い位置の薄い肩に手を置く。
「昨日、ミントお姉さんのお手伝いをしたら、抱きしめて頭を撫でてくれたんだけど」
あぁ、言われてみれば、そんなこともあった。
「ミントお姉さんは、少し苦しい。多分、胸が大きいから・・・かと」
冷静に分析しないでいただきたい。
今度こそ膝から崩れ、ライはテーブルに片手をついた。
育て方を間違えたのだろうか、育児の難しさは充分に承知していたつもりだが、とんだ落とし穴に眩暈がする。
とにかく改めてコーラルの肩に両手を置き、同じ高さの視線を強めた。
「いいか、コーラル」
「はい」
重々しく言えば、コーラルも神妙な様子で頷く。
「それを他の人に言うなよ。特に、本人たちには」
分かりました、は、元気な挨拶にかき消された。
姉弟が笑顔で手を振り、それに応えて立ち上がる。
「おはよ!」
「おはよう、ライさん、コーラルくん」
丁寧に頭を下げた後、コーラルの視線が水平の高さで留まる。
それからおもむろに、目前のリシェルに抱きついた。
どうやら確認の積もりらしいが。
目を丸くした彼女は、それでも金糸を愛しげに撫でる。
「何なに?甘えん坊さん?」
性格とは裏腹に慎ましやかな胸は、確かにコーラルの視界を圧迫する様子はなさそうだが。
朝っぱらからどこを見ているんだ、と、ライは軽い自己嫌悪を覚えた。
「どうしたの、ライさん?」
「何でもない」
トボトボとカウンターに歩いていく店主に、年下の幼馴染は首を傾げる。
「よぉし、コーラル。今日は私と図書館に行こうか!」
「図書館!」
ピコンと、コーラルの角が跳ねたように見えた。
フライパンに乗ったままのムニエルを皿に乗せながら、ため息を吐く。
「行く?」
「行く」
無表情に心なし嬉しそうな色を秘め、それから、ぎゅぅ、と。
こらこら、胸に顔を埋めるな!
最近、甘えるのが上手くなったようなコーラルに、ライは思わず口の中で説教をした。
PR
この記事にコメントする