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初っ端これですいません。



「お父さん」

真顔(この子供がそれ以外の表情を見せることは少ない)で、皿を運びながら、コーラルがつぶやいた。
今朝も現れるだろう幼馴染たちのために、食卓には四人分の食器が並べられる。
焼きたてのパンをバスケットに放り込みながら、立ち上がらずに応えた。

「リシェルお姉さんが」

まさかもう来たのかと、カウンターから顔だけ出す。
その姿は確認できず、首を傾げた。

「リシェルがどうした?」

透明な水差しには、朝日のきらめく清水が揺れる。
グラスに水を注ぎつつ、コーラルは頷いた。

「リシェルお姉さんが、一番気持ちいい・・・かと」
「・・・・・・・・・・」

愛するわが子(語弊)の言葉が理解できず、一杯にパンの詰まったバスケットを抱えてカウンターから出る。
テーブルの中央に置き、彼女の指定席にスプーンを一本、余計に置いた。
ティースプーンより幾分大きな、デザート用のものだ。
ご要望の、蜂蜜入りのパンナコッタを、彼女が気に入るようならメニューに追加しようという腹積もり。

「・・・・・何が?」
「抱かれ心地」

たっぷり一分、硬直した。

「・・・・・・お父さんはお前をそんな子に育てた覚えはありません」
「?」

膝から崩れ落ちそうになるのを何とか堪え、低い位置の薄い肩に手を置く。

「昨日、ミントお姉さんのお手伝いをしたら、抱きしめて頭を撫でてくれたんだけど」

あぁ、言われてみれば、そんなこともあった。

「ミントお姉さんは、少し苦しい。多分、胸が大きいから・・・かと」

冷静に分析しないでいただきたい。
今度こそ膝から崩れ、ライはテーブルに片手をついた。
育て方を間違えたのだろうか、育児の難しさは充分に承知していたつもりだが、とんだ落とし穴に眩暈がする。
とにかく改めてコーラルの肩に両手を置き、同じ高さの視線を強めた。

「いいか、コーラル」
「はい」

重々しく言えば、コーラルも神妙な様子で頷く。

「それを他の人に言うなよ。特に、本人たちには」

分かりました、は、元気な挨拶にかき消された。
姉弟が笑顔で手を振り、それに応えて立ち上がる。

「おはよ!」
「おはよう、ライさん、コーラルくん」

丁寧に頭を下げた後、コーラルの視線が水平の高さで留まる。
それからおもむろに、目前のリシェルに抱きついた。
どうやら確認の積もりらしいが。
目を丸くした彼女は、それでも金糸を愛しげに撫でる。

「何なに?甘えん坊さん?」

性格とは裏腹に慎ましやかな胸は、確かにコーラルの視界を圧迫する様子はなさそうだが。
朝っぱらからどこを見ているんだ、と、ライは軽い自己嫌悪を覚えた。

「どうしたの、ライさん?」
「何でもない」

トボトボとカウンターに歩いていく店主に、年下の幼馴染は首を傾げる。

「よぉし、コーラル。今日は私と図書館に行こうか!」
「図書館!」

ピコンと、コーラルの角が跳ねたように見えた。
フライパンに乗ったままのムニエルを皿に乗せながら、ため息を吐く。

「行く?」
「行く」

無表情に心なし嬉しそうな色を秘め、それから、ぎゅぅ、と。
こらこら、胸に顔を埋めるな!
最近、甘えるのが上手くなったようなコーラルに、ライは思わず口の中で説教をした。
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