ログ②（ルシフェア）

ネタバレ＆妄想爆発
正直、ルシアンが可愛くて仕方ないんだ、うん。
フェアがあんなに鈍くなきゃ、フェアルシでいいくらい（無理があるのでルシフェア）

独り者の同級生たちに散々やっかみを受けたのは今朝のことで、彼は今、学校から大分離れた場所にある帝国の中心街に来ている。
一月に二度しかない、貴重な休日だ。
恋人に会いに来て何が悪い。

『付き合いが悪い！』

いや、そうかもしれないが。
普段は四六時中、彼らと寝食共にしているのだから、それくらい許していただきたいものだ。
とにかく中心街に到着し、目的のレストランに達したのは昼時前であった。
これから忙しくなる時間帯で、若き一流料理人にはなかなか取り次ぎしてもらえなかった。
承知の上であったため、端の席に座り簡単な料理を注文する。
ミュランスの星という、仰々しい肩書きを持つレストランだが、オーナーの方針から、手頃な値段のメニューが揃っている。
実家は名家であるが、学費と最低限の生活費しか仕送りされていない彼には有難い話だ。
運ばれてきたオムライスは、彼女の作る味で、ささやかな幸せに浸りながら、次第混み始めた店内の片隅で穏やかな昼を過ごす。
一度だけ、厨房から姿を見せた彼女が、輝くような笑顔で手を振ってきた。
何気なくそれに返したが、店内の視線が一気に自分へと集中し、閉口したのは黙っておくことにして。

「お待たせ、ルシアン！」
「ううん、お疲れ様。・・・髪、切ったんだ」
「・・・どうかな」
「似合うよ、フェアさん」

エプロンを外し、嬉しそうに笑う彼女の手を取り、まだ騒々しい店を後にした。



今日の午後から明日いっぱい、休暇を取るのが彼女の常だが、普段は仕事に忙殺される姿を知っているためか、同僚たちは快く送り出してくれる。

『楽しんでらっしゃい』

年配のウェイトレスに背中を押され、冷やかされながら厨房を駆け出した。
急いでエプロンを外し、手を洗う間に鏡を覗き込む。
年頃の娘であるはずだが、お洒落というものに関して、相応の興味がない。
故郷の幼馴染に散々せっつかれ、一着だけ買ったワンピースを、荷物の底から引っ張り出した。
女の子らしい服と言って、これくらいしか持っていないのだから困り者だと、他人事のように思う。
手早く着替えてもう一度、鏡を覗き、手櫛で髪を直した。
一昨日まで、懐かしい三人が来ていた。
休暇の駐在軍人が、幼馴染とそのお目付け役を伴って顔を見せたのだ。
弟が来るまで待っていればいいのに、と言ったが、これでも忙しいの！　と返された。
因みにこの提案が墓穴で、定期的に会っていることがばれて、それならお洒落をしろ、服を買って髪を切ってと、大騒ぎになったのはここだけの話だ。
気付くかな、と、短くなった前髪を撫でて、照れ臭くなり鏡の前から離れる。
荷物を持って店内に入り、いつも彼が座る席を定めた。
コーヒーを飲みながら、教科書なのか、本を捲る彼が、不意に顔を上げる。
浮かぶ微笑に手を振って返し、混雑する客を縫ってその席に近付いた。

「お待たせ、ルシアン！」
「ううん、お疲れ様。・・・髪、切ったんだ」
「・・・どうかな」
「似合うよ、フェアさん」

立ち上がり、高い位置から見下ろす彼の柔和な笑みに嬉しくなり、差し出された手に自分のそれを重ねた。