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ルシアン×フェアで10の強さ
05.男の子
「あんたがフリフリヒラヒラ着て客寄せ、って考えてみたけどさ」
「やらない、って言ったでしょ」
白い目で見つめた幼馴染は、紅茶のカップを口に当てて視線を横に移動させる。その先には、同じ色の目を丸くして、姉と幼馴染を交互に見遣る少年が鎮座していた。因みにその向かいでは、空色の髪の幼子が、さも美味そうに卵入りのサンドイッチを頬張っている。
最も混雑する昼飯時は終わり、とは言えおやつの時間には少し早い。御使いたちは、各々が自室なり庭なりで適当に過ごす間、仕事に追われていた幼馴染とその愛児は、遅めの昼食をとっていた。
薄い瞼で半ば琥珀の瞳を覆い、リシェルは口の端で笑う。
「見たい?」
「え、いやっ」
慌てる弟の顔に、遅れて上る朱を見止めて、鼻を鳴らした。
「見たくない、って」
「どうせ似合いませんよ」
「そっ、そういう意味じゃ!」
口を尖らせて卓に肘をつけば、ルシアンの声が上擦る。
「なぁなぁ、何の話だ?」
母親代わりの袖を引くリュームに応えたのは、苦笑を浮かべるフェアではなく、紅茶を飲み干したリシェルだ。
「リボンとかレースのいっぱいついた可愛い服を、フェアが着るのよ」
しかして幼子は、いまいち想像がつかなかった様子だ。いそいそと、リシェルは卓の下から絵本を取り出す。どうやら膝の上に置いていたらしく、サンドイッチの皿を弟の前に移動して、中央に広げた。
「こんな服」
指し示した少女は、宝石の飾られたティアラと、純白のドレスを着ている。
「こんなの着てたら、仕事になんないでしょ」
「だからぁ、裾をポムニットくらいにして、袖も絞ればいいじゃない」
「って言うか、これ結婚式のドレスだし」
本の上で交わされる少女たちの会話に頓着せず、碧眼はまじまじ、華やかな絵を見つめていた。
ゆっくりと瞬きした幼子が、顔を上げて真向かいに視線を放る。カップを中途半端に掲げたルシアンは、目前でやり取りされる生産性のない話題に、曖昧なため息を吐いたところであった。
「なぁなぁ」
不意の呼びかけに、二人の囀りは中断せられる。
「何? リューム」
「この服」
指先の示す少女は、相変わらず、真白なドレスに包まれている。
「ルシアン兄ちゃんのほうが似合いそうだな」
ガタン、ガチャン、という擬音語が鳴り響き、続いて響く笑い声。
何事かと駆け込んできた御使いたちは、きょとんとばかりに首を傾げる主と、腹を抱えて爆笑する二人の少女と、床に散らばる陶器の破片と褐色の水溜りの上で項垂れる少年を目撃することとなった。
うららかな昼下がりの出来事である。
正直、すまんかった。
でも、銀髪に純白のドレスじゃ目に痛そうだし。
雪の女王とかどないなるんじゃ、と言われても困る。
ミルリなら、「ミルリーフも着たい!」ってなりそうですね。
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