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ルシアン×フェアで10の強さ
06.女の子




06.女の子
 
それにしても。
 
「よく考えてみると、屈辱だわ……」
 
愛息子の爆弾発言に、未だ立ち直れずベコベコに凹んだままの幼馴染を横目に、フェアは呟く。暗い顔で、自分が落として粉々に砕いたカップの破片を拾っていたルシアンには、届かなかったようだ。
横顔を眺めて、抱えた膝の上に顎を乗せる。
手入れの行き届いた茶色の髪に、日焼けを知らないのかと思わせる白い肌、柔らかな色合いの双眸は丸く、今は顰められている細い眉も、普段は穏やかな曲線を描いている。
おや?
と、フェアは首を傾げた。つらつらと並ぶ修飾語が、どうにも男の形容ではないように思えた。
 
「あ~」
「え?」
 
ちりとりに白い陶器を乗せ終えて、漸くルシアンは顔を上げた。
 
「あ、ごめんなさい」
 
そうしてまた、今度は違った意味で顔を曇らせる。
 
「どうしよう……、僕、新しいの買ってくる」
「いいわよ、別に。器物破損なんて日常茶飯事、今度、揃いで買おうと思ってたし」
「そう? ……荷物を持たせていただきます」
「最初からそのつもりです」
 
顔を見合わせて小さく、声をたてて笑う。
 
「捨ててくるね」
「うん、ありがと」
 
ちりとりを手渡して、オープンテラスから外に駆けていく背が、不図、振り向いた。逆光でも僅かに知れる顔色は、心なしか、赤い。
 
「あのさ、フェアさん」
「何?」
 
立ち上がって首を傾げる。
 
「似合う、と、思うよ」
「……うん?」
「見て、みたいから」
 
それだけ言い置いて、彼は慌てて向きを変えた。
戦闘要員の中でも俊足に分類される、すぐに足音は遠退き、そして聞こえなくなった。暫時、沈黙。
剣だこと、水仕事の結果が浮き出る荒れた両手を見下ろした。目の周りが熱い。指先を合わせて顎まで持ち上げ、震える唇を抑える。それでも、口の端が上がり、喉からは、嗚咽に近い忍び笑いが漏れた。
合わせた両手を額に押し当て、しゃがみ込む。
 
帰ってきたら、どんな顔を見せてやろうか。




なかなか恥ずかしい仕上がり。
ってか、05読まなきゃ意味がわからないです、ね!
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