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ちょっと前に書いたライリシェの続き。









 


「ねぇ、あなた」
 背後で、鈴を転がすような声が聞こえた。
 綺麗な声ね、若そうだし、女の人かしら。その程度の感想を持ったまま、リシェルは歩を緩めることなく廊下を進む。その声が自分を呼んだなどとは、夢にも思わなかった。
 先日、ライが危惧した通り、あれ以来、リシェルの評判は地に落ちた。いや、既に地上スレスレの場所で揺れていたのだから、大した変化がないと言ってしまえばその通りなのだが。
「ちょっと、待ってってば!」
 肩をつかまれ、驚き振り向く。自分だったのか!?
 若い女の声だと思ったが、予想を裏切らず、そこにはハニーブロンドの髪の娘が佇んでいた。同じ年頃だろうか、金色の瞳、顔立ちは上品だし、何よりこの建物の中にいるのだから金の派閥の人間であるはずなのに、簡素な上着と短いスカートで、いっそ市場にいるほうが似合いのように見えた。それでも、片手に携えた杖はデスロッド。リシェルも名前しか聞いたことのない、とてつもなく貴重な杖である。
 そうして、そのいでたち、同じ年頃の娘という情報で、彼女が何者であるのかはすぐに理解できた。
「ミニス様!?」
 裏返る声に、努めてリシェルの存在を無視していた周囲も驚愕する。
 ミニス=マーン。金の派閥議長であるファミィ=マーンの一人娘であり、現在、母に継ぐ実力として知られる女性だ。間違っても、最早派閥の爪弾き状態であるリシェルがお近付きになれるような人物ではない。
 と、すれば、解雇か。
 それはマズい。
 仮にも弟のために家を継ぐことを決意した身、恋人の弁護をして追い出されたとあっては、それを恥とは思わないにせよ、いくら何でも示しがつかない。
 リシェルの被害妄想は、どうやら周囲も同じように想定したらしく、冷ややかな笑いでもって遠巻きに眺めている。壁際でひっそり耳打ちし、嘲笑を浮かべた二人の男を、後で思い切りぶん殴ってやろうと、リシェルは固く決意した。
「嫌だなぁ、ミニス様なんて。私たちきっと同い年よ、ミニスって呼んで」
「へ?」
 目を丸々見開いて、間抜けに問い返す。
「あなた、何て名前なの?」
 あまりに気さくで、裏のない華やかな笑顔。
「えっと、リシェル、です」
 本来、召喚師であれば必ず名乗らなければならない家名すら忘れて、慌てて自己紹介。差し出された手は、銃を扱う自分のそれよりも華奢だった。
「よろしく」
「……よろ、しく」
 軽く上下に振ってから、ミニスは顔を覗き込んでくる。上背は、リシェルが踵の高い靴を履いているためもあろう、彼女の方が低い。
「この前、中庭で恋人と待ち合わせしてたでしょ?」
 サーッ
 音を立てて血の気が引いていく。やはりあれか、追放勧告か。
 冷や汗すら浮かべるリシェルの動揺に、漸く気付いたらしい、ミニスは慌ててその手を握りなおした。
「ね、咎めるとかじゃないのよ! あなた、勘違いしてるわ!」
「え」
「リシェル、かっこよかったよ。品格は生き方についてくる、って。私もそう思う」
「え、あ」
「ねぇ、恋人の話聞かせてよ。いつも待ち合わせしてるでしょ? かっこいいよね、強そうだし」
 はしゃいで続く彼女の言葉に、ただただ驚き首を縦に振るしかない。
「あ、でもね」
 ぴたり、跳ねる動作を止めて、ミニスは誇らしげな笑み。人差し指を口の前に立て、片目を瞑って見せた。
「私の恋人のほうがかっこいいから」
 弾けるように、娘たちの華やかな笑い声が響き渡った。

 

 今日はリシェルの機嫌がいい。待ち合わせに来たときは満面の笑顔だし、派閥内での愚痴もほとんど言わない。
 何より、彼女を追う視線に変化が生じている。奇異というか、畏怖というか。
「……お前、何か仕出かした?」
「何それ」
 心外だと言わんばかりに眉を顰めつつ、斜にかぶった帽子の鍔を持ち上げる。むき出しの肩に日が当たり、嬉しそうに浮かべられた笑顔と相俟って、いやに眩しかった。
「友達できた」
「へぇ?」
「すっごく綺麗な子。今日は忙しくて予定合わなかったけど、今度来たとき紹介するわ」
「楽しみ」
「あ、でも惚れちゃ駄目よ」
「……当たり前だろ。何その信頼度の低さ」
「恋人いるんだって。年上で優しい恋人。誰かさんとは大違い」
「……年は仕方ないだろ」
「誰もあんたとは言ってないでしょ。被害妄想~」
「誰がさせたんだ、誰が」
 握った手を引き寄せて、帽子の鍔にそれ以上の接近は阻まれた。それでも近い場所、彼女が微笑む。
「だ~いじょうぶよぉ、あたしは年下でも強くてかっこいい男が好きだから」
 ぴたり、二人の足が止まった。
 すれ違う男がライの肩に当たり、いぶかしみながら過ぎていく。街角で、年頃の男女が見つめ合い沈黙しているのだ。行き過ぎようとした中年の女たちが、囁き合い、様子を伺うのは道理というもの。
「……あ~……」
 目を逸らし、ライは喉から音を搾り出す。握り締めていた手を、もぞもぞ、動かして、指を絡め取る間には頬の熱が上がっていく。
「照れた? 照れた?」
 交互に絡む指に、リシェルは頗る上機嫌だ。全ての指を交差し終えてから、覗き込んでくる笑みから顔を背けて歩みを再開する。背後でおばちゃんたちが、つまらなさそうに舌打ちをしていた。あんまりだ。
 大股に歩めば、手を引き連れる彼女の足が早まる。高いヒールが音を立て、それ以上に、高い文句が背中に当たった。
「待って! 待ってよ、早いってば、馬鹿ライ! ころぶって、きゃぁ!」
 悲鳴が響き、終わる前に振り向き抱きとめる。片手で腰を支え、解いた手で帽子を奪う。驚いた表情が持ち上がり、こちらの視線とぶつかる瞬間。
「ちょっと黙れ」
 唇が触れるほどの距離で、呟いた。

 

 





書いてるうちに滾ってきました。
ライリシェたまらん。




どうでもいいけど、久しぶりに行ったサモナイNLサイトが、ロリショタ団蔵受け描いてたという事実を受け入れられなくて困っている。
誰か助けて、マジで。
この憤りは一体何なんだ。



結論から言えば、私は清団が嫌いである、ってことだ。





 

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